インサイド・ジャンクション

第7週 平行

8月18日(月) 雨

朝目覚めてからも一昨日からの雨はずっと止む様子を見せなかった
ったく……夏だろ?
何で雨なんか降るんだよまったく……
どっかに出かけるのも億劫になる
しかも湿度がとんでもない事になってカビでもコケでも生えそうな勢いだ
ちくしょーうぜーよこの雨

宿題はこの雨のおかげで勢いに乗って既に終わらせてたし
ゲームはトビーに貸したままだし……うかつ

暇だ

エルの宿題でも手伝ってやろうかと思ったが
ずっと部屋にこもったままだ……自分でやっちまうみたいだな

昼間はボーッと携帯触って過ごした

しかし3日間止まずに降り続けた雨も夜になってから、ようやく降りおわったようだ
とりあえず少年VIP買いに行ってきた
本屋の閉店直前ギリギリセーフ

そしたら意外
本屋でクラスメイトの女子にばったり出くわした
買ってたのは俺と同じ少年VIP
大人気だなあ(^∀^)

8月19日(火) 後記・晴れ

昨日とはうってかわっての大晴天
泣くだけ泣いてスッキリした野郎みたいな天気だ
朝一番でティアから「今日会いたい」ってメールが入ったが
寝坊したふりして午後になってから彼女の家に行った

ゴムも持っていこうかと思っていたが見つからない
先週買い増ししたばっかなのにな……と思いつつ手ぶらでGO
そしたらどうやらティアんちに置いたままだったらしい
二人ともバカだと思うぜ

どうも宿題をやってるらしかった
いきなり手伝えって……
お前俺の宿題どうなるんだよ(`∀´;)
と冗談で言ってやったら
昨日メールで『終わったぜ』って言ってたじゃん
と一蹴された
バカなのは俺だけか(^Д^;)

結局昼間中宿題の手伝いに付き合わされ続けた
ゴムの意味ねーよ(っД`)
と思ったら不意にティアが

今日両親帰ってこないよ

とか言い出すからびっくりした
なるほど……だから「今日会いたい」か^^;
今夜家にはティアだけ
ちょうどいいし泊まることにした

家には……別に言わなくてもいいだろ
ついこないだもライんトコに泊まったしな
なんとなく外泊だと思ってもらえるだろう
帰った後にでも適当に言っておけばいーや


とりあえずゴムは無駄にはならんかったぜ(`∀´)b-☆GJ

8月20日(水) 後記・晴れ

勢いってのは時に奇跡を起こすもんだ

なんとティアの宿題も全部仕上がってしまった
要するに今日も宿題解きに延々付き合わされたワケ(っД`)

仕返しに
後で嫌というほど突いてやったけどな^^

それでティアが宿題お疲れ記念で
飲んでみようってことになって
近所の自販でアルコール入ったようなの買ってきて
飲み食いが始まった。
俺、酒全然飲んだことなかったけどな
ティアがぐいぐいいくもんだから
俺も調子に乗ってごくごく飲んだのはうかつだった

俺、酒に弱いのかもしれんな(^^;)

しばらくすると意識がおかしくなってきた
ティアが何か俺に喋りかけてくるんだが何を言ってるのかさっぱり聞き取れない

あー駄目だorz
この日はここまでしか記憶が無い

8月21日(木) 曇り

俺は自宅のソファで目を覚ました
時計を見ると既に午後に入っている

俺は程なくして昨夜からの動向を推測した
……悪いことをしたなぁ

エルは相変わらず部屋にこもったままだが
おそらく俺をソファに運んでくれたのはアイツだ

俺はエルの部屋の前で
「昨夜はありがとうな」
そう言った

「……昨夜の事……覚えてないの?」
部屋の中からそんな返事が聞こえてきた
「何かあったのか?」

返事は返ってこなかった

ティアにも電話で詫びっておいた
やっぱり酔い潰れた俺を家まで連れてきてくれたようだ
その時、応対したのはやはりエルだった

「何だかエレニーちゃん凄い別人みたいだね……兄妹に見えなかったよ」
ティアは電話をきる際にそう言っていた

まぁ変装だ! って調子付けたのは俺だしな……
よほど気に入ったのか、あれから1ヶ月ぐらい経つけどあのままだ

何とか夏休みが終わるまでには
昔のようなエルに戻って欲しいと思う
終始、エルの事情は全く知らないが
最近また部屋にこもりきったままで心配だ

……宿題頑張ってるだけなら安心なんだけどな

8月22日(金) 晴れ

噂が流れる速度ってのは凄まじいもんだ

「宿題見せてくれよー!」

プゲとトビーとライから次々に電話がかかってきた

プゲに「どうせ始業式に持ってくるの忘れるだろ(^Д^)!」
トビーに「まずゲーム返せよ(^Д^)!」
と一蹴した後で……

結局、皆でライんちに集合して写すことになった
でもよく考えりゃ9月入ってからでも十分に写す時間はあるよな?
あまり気にしないことにした
結局途中で破綻してゲームが始まるのはいつもの事だし

……トビーからはちゃんと返してもらった
オッケーオッケー(^ー^)

今夜はエルが一度も部屋から出なかった
晩飯の時ぐらい家族で揃って食べようぜ?

8月23日(土) 晴れ

エルの様子が何だかおかしい
昨夜も深夜帯にこっそり部屋から出て冷蔵庫漁ってたみたいだし

朝飯も昼飯も晩飯も食べる時間がずれていた
俺が部屋に居る時にタッタッタと部屋から出てきて
あっという間に部屋に戻っていく
……そういう音が聞こえていた

ずっと宿題をしているわけでもあるまい

そのうち、エルの部屋のほうから変な音が聞こえてきた
何かを叩くような音、何かが落ちるような音、何かを投げたような音
流石に不審に思って俺はエルの部屋に入ろうとした

……が、鍵がかけられていてドアは開かなかった

「……ごめんね……ちょっと独りで居たいの……」
中からエルの声が聞こえてきた

夏休みに入って
塞ぎ込み気味だった調子が、だんだんと戻ってきて
これなら夏休み中に以前のように復活するかもな……

そう思っていたのに

エル、アイツは何をそんなに荒れてるんだ?
何がアイツをそうさせるんだ?

「エル! 悩んでるんなら何でも相談に乗ってやるぞ!」
俺はもう一度部屋の前からアイツに呼びかけた
……が

「……放っておいて頂戴」

一蹴された
「どうしたんだよ! 溜め込んでるより話してしまったほうがスッキリするぞ!」

返事は返ってこなかった

8月24日(日) 後記・曇り

アレが俺の見たアイツの最後の姿だった


ライんちに皆で集まって夜遅くまでゲームした後に帰宅して
眠いからソファに横になったままいつの間にか寝てしまっていた

俺は、足音で目が覚めた
「……どうした?」
と俺が声を上げるのと同時に
「ヒッ!?」
悲鳴のような声を小さく上げてそいつは反応した
時計を見るのも億劫になる……電気はついてないから真っ暗闇
深夜だよな……?
そう疑問が残った俺はまともだったに違いない
目の慣れていた俺が見たのは今更出かけようとしているエルだった

「……お兄ちゃん? そこに……いた……の?」
震えるような小声でそう聞いてくるエルは
どことなく怯えたような表情をしていた

「どこかに行くのか?」

「ちょっと……眠れないから散歩してくるね」
少し焦ったような口調だった
だけど俺はその時、何の疑問も抱いていなかった
「そうか……行ってらっしゃい」

「うん……行ってきます」
エルは少し声を上げてそう言った

ただの散歩なのに大げさだな^^;
……と他人事のように思ってしまったのは
きっと俺が寝ぼけまなこだったからだろう
遠出するかのようにバッグを肩から下げてたことも
その時の俺には指摘のしようが無かった

程なくしてエルは玄関から出て行った
一度だけ郵便ポストを開ける音が聞こえたが
その時の俺は、
「こんな時間に郵便なんか届いてるわけ無いだろうに(´_`)」
……ぐらいにしか思えなかった

どうしようもなかったんだ

真夜中に見た夢か何かだと思いたい
だけど……間違いなく
夢でも何でもなく


アレが俺の見たアイツの最後の姿だった





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