インサイド・ジャンクション

9月29日(月) It goes Inside Junction deeply.

昨晩から依然として雨が激しい……
潜伏地をそろそろ移転させたいところだが
今日はもうしばらくここにいることにしようと思った

ネクサスの体調が芳しくない
とりあえず今は安静にしておいたほうがいいと判断した
ネクサスの身に何かあってからでは遅いんだ
彼女は俺の目的の為に、絶対に必要なピースの一つなんだから

「昨日はサンキューな」
何度も言ったが、もう一度彼女に心の中で礼を言った
今は隣で寝息を立てている、熱はだいぶ下がってきた……かな
とりあえずしばらくはこのままだ……
俺がゆっくりコレを書いてるのもそういった時間的な余裕が生まれたから



昨日、俺はハイウィスの家から出る際に
俺がジョルジュに預けた全ての日記を持ち出してきていた
もうあの家に置いておく理由はないし
俺はもう日記を持つ持たないの意味も無くなってしまっている
……なにより、ハイウィスに日記の存在を知られるわけにはいかなかった
当然だ、俺がハイウィスをセイントの世界から切り離した

本当ならば即刻処分すべきなのだろう
しかし俺はそれを踏みとどまった
何故なら、この日記はキアニス家を崩壊に導いた全てが詰まっているからだ
そして、俺がそれをもとに正すための動機の全ても詰め込まれている

思えばたった1ヶ月程しか経っていない
だが、この間に俺は巻き込まれ、気付かされ、
そして壊された、奪われた

無責任な傍観者で居続けた方が幸せだったのかもしれない
妹、エレニーの暴走、失踪……
気付かなければ良かったのかもしれない
母さんが死の前に初めて話してくれた俺の出生の秘密……


父親がサモンカードの魂……セイントだということ
そして俺がその種から生まれたセイントチルドレンだということ


知らされなければ……巻き込まれなければ……
きっと俺たちキアニス家は何も知ることなく
ずっと平和に暮らしていけたはずだったのに
あの時……エルがあの教師に暴行さえされなければ……!
あの時……エルに無理に外に出るように言わなければ……!
あの時……エルが丘陵に足を向けてさえいなければ……!
あの時……エルがリーガレットと会わないでさえいれば……!
あの時……エルがカードをもらってさえいなければ……!
あの時……

何度考えても悔やまれる
今はもう居ないあのクソ教師に殺意すら沸く……死んでるのに
だが、俺の憎悪の矛先はもっと違うものに向いた

……そう
『サモンカード』だ

あの呪いのカードさえなければ
キアニス家が崩壊することも無かった筈だ
エルは殺人を犯すことなく生きてゆけた筈だ
母さんは首を吊らずにすんだ筈だ
間違った存在として俺が生まれてくることも無かった筈だ


そうして考える間もなく
俺のやるべきことは自然と頭に浮かんだ
それは……





『サモンカード』そのものを根絶やしにしてやること



付加能力だとかパートナーだとか
そんな甘い言葉で利便性をうたったこのふざけた呪いの存在は
抹消させなければならない
サモンカードで幸せを得ることなんて出来ない
その先に見えるのは……絶望だけだ
だから俺が全部消してやる
そしてカードの力に溺れていったエルを目覚めさせる
俺がやるしかない……俺しか出来ないことだ


ネクサスを引き連れてきたのもその為
リーガレットがその組織から失踪する際に奪って行った能力
人間と魂を引き離す最悪の力『リセイント』
それと全く同じ付加能力を彼女は持っていた
カードではなく、その『リセイント』を身に秘める存在
そう、彼女もセイントチルドレンだった

セイントチルドレンの集団『セイントセイダース』
俺が絶望に明け暮れた時に迎え入れてくれたその集団は
『リセイント』を手に入れるためにガルガンチュアに襲撃をかけた
そして手に入れた
あの時、俺は目の前に見えたネクサスが女神に見えた
エレニーを元に戻すための希望がそこにあった

気付けば、俺はネクサスを引き連れてセイントセイダースから離れていた

セイントチルドレンはその特異な体質ゆえに社会から見放された存在
知られてはいけない……知らせてはいけない……やはり面倒だ
と、セイダースのトップは喋っていた
俺は初めはこの集団なら身を任せられると思っていた……

でも!!
何故あいつ等はそれなのに……!
全ての元凶であるサモンカードを利用しているんだ!
即時に抹殺するべき存在を……利便性に溺れて……!
そして身にもつその力をあろうことか
破壊の為、私利私欲の為に使っていた……それがセイダースという集団だった

やはりダメだと思った
俺が何とかしなくちゃいけない……そう確信した
なにより一番嬉しかったのは、ネクサス
彼女が俺のこの目的に同調してくれたことだった

彼女はまだ幼いが……
恐れることも無く……反発することも無く……
俺にその身を委ねてくれた


そして、ティアに別れを告げた
俺が呪いの世界に更に深く沈みこんでいくというのに
何の関係も無い彼女まで巻き込みたくは無かった
……こうするしかなかったんだ
セイントチルドレンは生殖能力も持たない
俺はティアと一緒になることはできない
だから無理やりにでも別れるしかなかった
彼女からすればとんでもない話だ
俺を嫌ってくれた方が……彼女の為になると思った……


最後に、俺はジョルジュの元へ向かった
俺が最後に別れを告げる理解者の元に
そして俺が俺の目的の為に動き出す第一歩として

ネクサスに『リセイント』を発動してもらった
そしてハイウィスの魂をカード化させて一旦回復させ
再びハイウィスに永久融合させた


ジョルジュは……
俺の目的の為に……サモンカード抹殺の為に
俺はセイントの中で一番最初に



ジョルジュを殺した



いや、厳密に言うと『殺した』ではない……らしい
俺が全てを話した時、ジョルジュは言っていた

セイントはサモンカードという檻に閉じ込められた魂だと

例えば、セイントが封印された状態で
サモンカードを破り捨てる
カードは消滅プログラムが働き自然発火する
だが、中に封印されていたセイントはそこで死ぬわけじゃない
カードという檻が消えればセイントの魂は本当の意味で解放され
浄化されるものなんだ……と

だから、カードを破ることは殺すことではない
その行為は……本当は……ある意味でセイントを救い出す唯一の方法だ、と


だから俺があの時ジョルジュをカードに戻した状態で破り捨てた時
ジョルジュは解き放たれた……きっとそうだったのだ


……だが
俺はあえてこれを『殺す』ということにした
せめて……エルを救うまでは……

それが呪いの力、サモンカードに対する復讐のつもりでいるからだ


反発をされることなど目に見えている
命を狙われることなど目に見えている
この目的は無謀なことだなんて自覚している
出来るわけがない……そんなこと俺が一番よく分かっている

でも、だからこそ
俺はやらなくちゃいけないと思った
まだ気付かないヤツもいるだろう
気付いたが全て後戻りできなくなったヤツもいるだろう
そいつらの為にも、
俺は俺の目的に向かってまっすぐ突き進んでやる


全てのサモンカードを……俺は皆殺しにしてやる


サモンカードは許されざる呪いの力
そして俺はその許されざる力によって生まれた存在
ならば……

俺はこの身に秘められたその呪われた力を持って
呪いそのものを滅ぼしてやる
お前らが生んだお前ら自身の子によって滅びればいい




俺はもう元の生活に戻る事を捨てた
知ってしまった以上……
復讐を決意した以上……
俺はこうなる運命にあったのかもしれない

ティアも……ハイウィスも……
お前らはもうこっちに来るな
もしお前らに危険が及ぶその時は……
その時は俺が影から全力で阻止してやる

俺はもう、そういう存在でいいんだ
ネクサスも……あいつ等セイントセイダースも……
いずれ消えなければならない存在……
滅びればいい……俺もろとも

狂人・愚者……何とでも言え
全ては俺が俺自身を信じて進む、そして殺してやる










宣戦布告だ

俺の名はヴェルサス・シモンズ

サモンカードの存在に、総てを賭けて抗う存在











- Inside Junction -











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